皆さん、こんにちは。SHIENです。
「革新複合材料研究開発センターへ行ってみた(前編)」に引き続き、今回は後編を紹介します。前編をまだご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。
1F 大型製造装置・成形・試験評価ゾーン
前編では大空間実験エリアまで紹介しました。1階には実験室などがあるラボエリアもあるので、見ていきましょう。
ラボエリア
炭素繊維小片テープ積層機
おっ、前編に引き続き、またもや石川県の企業の装置です。
これは、澁谷工業株式会社の炭素繊維小片テープ積層機です。
写真右下にある炭素繊維チョップドテープを積層して、ランダム材を作っています。
詳細な構造特性を明確にし、設計可能な材料としての適用を目指しています。
オートクレーブ
オートクレーブとは、内部を高温高圧にして複合材を成形する装置です。高精度な制御精度と均一な温度分布で、高品質な複合材料を成形することができます。
ICCでは主に航空機の材料開発に用いられています。
チー牛先輩のテンションが爆上がりした品物がこちら。
MicrosoftのSurface Hubです。画面上には4Kカメラが付いており、リモート会議ができます。コロナ禍で企業の人がICCに来る機会が減っていることもあり、大活躍だそう。
ペンと指を識別し、ペンを使うと線や文字を書くことができ、指を使うと拡大縮小やスワイプができます。
定規の機能もあり、ペンを滑らすことで直線を描くことも可能です。
チー牛先輩は部室に欲しいと言っていましたが、絶対に買うことはありません。
こちらはリフレッシュコーナーです。
ソファーがあると、寝てしまいそうです。
カップ麺やお菓子も売られています。疲れた体に染み渡りますね。
そんなこと言っていますが、私はカップ麺を年に数回しか食べません。
続いて、評価・分析装置を見ていきます。
顕微X線CT
繊維強化プラスチックの内部構造を詳細に評価することができる顕微X線CTです。
非破壊検査技術は、材料物性特性や構造特性の解明に利用されます。
こちらもX線装置ですが、ある企業の所有物で、この場所に装置を置いています。市販されているものではないそう。
ここで、写真NGが数多くある実証開発エリアの装置を1つ紹介します。
Zwick 万能試験機
これは、250kNの力を加えることができる万能試験機です。1kg = 9.8 Nですから、25トンが加わるということです。
引張や圧縮、曲げの試験ができます。航空機メーカーなど大手企業も使っている装置だそうです。
2F 分析・プロジェクトゾーン
2階にやってきました。このフロアには、原子・分子レベルで解析可能な分析装置を設置しています。
こちらは廊下で、ナレッジコリドーと呼ばれています。壁にはホワイトボードが配置されており、異業種の研究者たちがアイデアを書き出すことで、複合材料に革新を生み出します。
休憩中のふとした会話が世界を変えるかもしれないですね。
廊下の幅も広く、床にはカーペットが敷かれています。高級感が漂いますねぇ。
電界放出形走査電子顕微鏡分析システム
「おっー!これは研究室の先生が電気電子計測の授業で言ってたやつじゃん。」とチー牛先輩が言うのですが、私は記憶にございません。オンライン授業で大切な部分しか教えなかったからでしょうか?でも、どっかで見たことがあるんです。
高分解能観察や元素分析、結晶方位などを解析することができます。
固体試験評価核磁気共鳴装置
これは、原子核を磁場の中に入れて核スピンの共鳴現象を観測することで、物質の分子構造を原子レベルで解析する装置です。
超強力な磁場が発生するので、ペースメーカーやスマートフォンなどの機器には注意が必要です。
ナレッジコリドーには、何やら怪しげな仕切りがあります。
ここには、プリンターが隠されていました。仕切りを設けることで、見栄えもいいですね。
3F 化学実験・研究ラボゾーン
3階はバイオ系実験室と研究者の居住スペースを設けたエリアです。
ICCの研究員のデスクが並んでいます。ここも廊下とデスクスペースの仕切りは無く、オープンな環境です。
こちらは化学実験室です。工大生が何やら作業をしています。これまでICCの研究員ばかり出てきましたが、工大生も研究を行っています。
ところで、工学系施設になぜ化学実験室があるのでしょうか?
ICCは、現状では実現できていない大量生産や大型化など、数多くの難題を突破するために研究開発しています。そのためには、バイオ、高分子化学、繊維工学、機械工学など様々な分野の英知を結集することが必要なのです。
前編で炭素繊維と樹脂の融合を紹介しましたが、その樹脂の研究開発には化学が不可欠です。
ここは、実証開発エリア内の受入研究員エリアです。企業が部屋を借りて研究開発することができます。部屋の中は企業だけの空間となるので、機密事項に配慮してドアには暗証番号式の鍵がついています。
こちらは休憩スペースです。コーヒーマシンも設置されており、コーヒーを飲みながら、白山の山々を眺めることができます。
細かい作業をした後には目の保養になりそうです。
近くを流れる手取川のほとりで毎年8月に開催される花火大会では、この場所からも花火を見ることができるそうです。
屋上にはウッドデッキがあります。この日は雲が多く、白山連峰を見ることはできませんでした。
星を見るために天文部がこの場所に来たことがあるそう。その話を聞くと、チー牛先輩はこう言いました。
「僕もいつか☆になると思うと儚いなぁ」
2月の冷たい風が体に刺さります。
はい。
というわけで最後は大空間実験エリアを一望できるキャットウォークを歩きます。
私は高所恐怖症ですが、この程度なら問題ありませんでした。
ここまで革新複合材料研究開発センターを紹介してきましたが、いかがでしたか?
異分野の企業や研究機関がひとつ屋根の下に集うアンダーワンルーフ方式で、オープンな研究開発環境が整っているICCでは、異業種・異分野の融合を引き起こして、革新的な複合材料を生み出していることが分かりました。
最後になりましたが、お忙しい中取材に対応して下さったICCの方々に感謝申し上げます。内容も難しいものが多く、執筆作業も大変でしたが、実際の装置や作業風景を見ると、異分野を融合させて研究開発する大切さを学ぶことができました。
今度はどの施設へ行くのでしょうか?次回もお楽しみに!
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