革新複合材料研究開発センターへ行ってみた(前編)

皆さん、こんにちは。
朝のアルバイトをして帰ると、昼食も食べないで夕方まで寝ているSHIENです。

毎度おなじみとなりつつある大学紹介ですが、今回はどこへ行くのでしょうか?

この日の移動も日産の電気自動車「リーフ」です。

扇が丘キャンパスを出発して20分足らずで到着しました。

ここはどこかと申しますと、金沢工業大学 やつかほリサーチキャンパスです。このキャンパスでは、主に学部4年生と大学院生が日々研究活動に励んでいます。

その中でも今回は、革新複合材料研究開発センター(ICC:Innovative Composite materials research & development Center)を紹介します。

ICCとは?

「複合材料をもっと幅広く多くの分野で利用するために、企業と連携して適用技術の研究や製品開発を支援する」これがICCの理念です。

ICCはプラットフォームとして3本の柱を提供しています。それは「研究開発」・「教育」・「連携活動」です。研究開発はもちろん、大学院特別講義や社会人向け専門教育の実施、産学連携による異業種ネットワークの構築が可能です。

ICCパンフレットから引用

異なる分野の技術の複合化が不可欠な現代において、モノを創出するための基礎となる材料に着目して、材料開発から製造プロセス、エンジニアリング、評価・分析までの一連の技術分野をサポートしているのがICCなのです。


さて、無限の可能性を生み出している建物を見ていくことにしましょう。

こちらはエントランスホールです。垂直軸型の風車ブレードを輪切りにして内部構造を展示しています。手前のユニークな椅子もこのICCで生み出されたものだそう。

2階へ上がると広いスペースがあります。ここは打合せコーナーで、企業の方との打合せに使われます。

検温して受付を済ませます。モニターには、ICCに出入りする関係者の顔写真と名前が表示されており、緑色になっている人は現在ICCにいることを示しています。

学内システムで先生の居場所を知ることができたら便利かも?

ここから先は強固なセキュリティによってガードされています。

扉の向こうへと入ると、出入りが原則自由にできるオープンな環境となっています。異業種・異分野の融合を引き起こすことができる一方、知られたくない自社の技術は自分で守る必要があります。

早速、扉の先へ潜入開始!

1F 大型製造装置・成形・試験評価ゾーン

1階には、大型製造装置や成形機、試験機が配置されています。この空間では、基礎研究から製品開発への一貫した工程をスムーズに行うことができます。

大空間実験エリア

大空間実験エリア

ICCの一番の特徴である、大空間実験エリアの全景です。複合材料分野で、これほどの大空間を持つ研究施設は、国内の大学では初めてだそう。

このエリアは、複合材料で連続成形された大型構造部材を実際に組み立て、実現するための空間です。

担当者の方が装置や成形品について熱弁してくださっています。

ごく一部ではありますが、装置と成形品について紹介していきます。

ダブルベルトプレス

ダブルベルトプレスは、炭素繊維と熱可塑性樹脂フィルムを積層させ、ローラベルトの間で、樹脂を溶融させて炭素繊維に含浸させ、さらに冷却しながら加圧してシートを連続成形する装置です。

この「連続」というところがICCの肝となっており、複合材料の革新を起こすポイントのひとつ、「大型化」を実現するために必須なのです。

CFRTPシートとその成形品

炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)には、比重が鉄の約1/5、強度が鉄の10倍以上、弾性率が鉄の7倍以上という特性があります。

この特性を活かし、航空機や自動車など幅広い分野で利用されています。

HP-RTM成形機

HP-RTM(高圧レジントランスファーモールディング)成形機では、これまで数時間から1日程度の時間を要したCFRP部材の成形を10分以下で行うことができます。

あの有名自動車メーカーのBMW社は、この技術を初めて生産ラインに取り入れ、車体の主要骨格の量産化を実現したそう。

HP-RTM成形品

特徴は時間だけではありません。
写真からも分かるように、炭素繊維のテープをランダムに散りばめることで、複雑な形状に成形が可能であり、強度が格段に向上します。

TAL 自動積層機

おっ、これは石川県の津田駒工業株式会社の装置ではありませんか!

これは自動積層機で、熱硬化性材料や熱可塑性材料といった材料をテープ状に送り出し、それを貼り合わせて1枚のシートを作る装置です。

角度を変えて積層することができ、強い強度のシートも作れます。また、巻取機能も付いているため、「連続」したシートロールが生産可能です。

ウォータージェット切断機

こちらはウォータージェット切断機です。材料を切断する際の傾斜角度や加工速度を自動で制御できるため、高速かつ高精度の加工が可能です。

さて、ふと上を見上げてみると...

窓ガラスに「ICC」の文字が。この他にも建物内には「ICC」の文字が至る所にプリントされています。

続きましてこちらは、破壊試験をした複合材料の展示ブースです。

手前のワイヤのようなものは、石川県の小松マテーレ株式会社の熱可塑性炭素繊維複合材「CABKOMAストランドロッド」です。繊維会社であることを活かし、日本の伝統産業の組紐と炭素繊維の技術を融合しています。

ちなみに、私は小松マテーレの「マスクインナー」を日々愛用しております。「ダントツマスクール」も持っています。いつもウイルスから私を守っていただき、ありがとうございます。

引張りに強く、軽量で錆びず、施工性、耐久性に優れています。この特性を活かし、善光寺 経蔵の重要文化財の保存修理などに使われています。

実際の作業風景です。

前編はこのあたりでおしまい。
ICCの一番の特徴である、大空間実験エリアはいかがでしたか?

近年注目されている炭素繊維の技術と古くからの技術や伝統を複合させることで、革新的な材料が生み出されるのですね。

私たち大学生が研究活動をするときにも「複合」という考え方は欠かせなくなりそうです。そのためには視野を広げて何事にもチャレンジですね。

後編では、1階から3階のラボエリアを中心にご紹介します。次回もお楽しみに!

追記:3月1日に後編を公開しました。

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